研究テーマ:
 光受容蛋白質における
エネルギー変換・情報変換の機構解明

特にロドプシンを中心として
[生体分子光科学]

 最近の成果:特定「水と生体分子」のニュースレターより
 

  我々は光なしでは生きてゆくことができません。植物は光を使って炭酸ガスと水から炭水化物をつくり、動物は活動の源となる栄養を光のもとに見つけます。光受容蛋白質は、このように生物が光を能動的に利用する際に受容体となる蛋白質です。機能上、受容した光をエネルギーに変換するものと、情報に変換するものに大きく分けることができ、代表的な蛋白質分子として、図に示すものが挙げられます。これらの分子においては、光を吸収するための低分子(発色団と呼ばれる)が蛋白質という限定された環境のもとに存在します。それでは光が発色団に達すると何が起こり、どのようにしてエネルギーや情報へと変換されるのでしょうか?

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  私たちのグループでは、発色団としてレチナールをもつ光受容蛋白質(ロドプシン)を主要な研究の対象として、光エネルギー変換、光情報変換のメカニズムを明らかにしたいと考えています。特に、赤外分光法から新しい構造情報を引き出し、蛋白質の構造変化を原子のレベルで捉えることを試みています。具体的な研究を以下に示します。


 
【1】ロドプシンにおける光エネルギー変換のメカニズム研究
【2】ロドプシンにおける光情報変換のメカニズム研究
【3】ロドプシン以外の光受容蛋白質における光反応の研究
【4】ロドプシンのような人工系の構築
【5】ロドプシン研究を通しての赤外分光法の開拓

 

  生体分子は時間的・空間的な階層構造を巧みに活かして多様な機能を生み出しますが、光受容蛋白質の面白みはこれらの過程を徹底的に深めて追跡できるところにあります。実際に、量子力学が決定的な役割を演じる電子励起状態での初期過程はフェムト秒(10-15秒)の時間領域の出来事であり、蛋白質の最適化構造を形作る進化のための時間がペタ秒(1015秒)であるとすると、時間軸で30桁にも及ぶ事象が研究の対象となります。ゲノム科学や構造生物学の進展により蛋白質の共通性や多様性が理解されるようになった昨今、ロドプシンなどの光受容蛋白質が提供する情報はこれまで以上に重要な意味をもつものと考えます。