金属イオン応答DNA結合蛋白質のデザイン

 これまでのところでは、様々なスイッチ機能を持つコイルドコイル蛋白質のデザインに関して報告してきたが、ここでは具体的に金属イオン依存DNA結合蛋白質のデザインを試みた。天然の酵母由来ヒートショック転写因子は、3量体型コイルドコイルの形成に伴いその機能のスイッチがなされる事が知られている。そこで、この天然の3量化ドメインを金属イオン依存のコイルドコイル蛋白質IZ-3adHに置き換える事で、金属イオン依存のDNA結合蛋白質のデザインを試みた。蛍光偏光解消測定から、認識配列を含むDNAとHSF-IZ-3adHの結合がスイッチできる事が明らかとなった(103程度の会合定数の差)。また、このDNAとの結合に伴うDNA上での反応阻害の評価を制限酵素による消化反応により確認した。この結果、金属イオン依存的にDNA上での酵素反応の阻害をデザイン蛋白質により可能である事が明らかとなった。

ヘテロコイルドコイルの選択的相互作用を利用したリガンド依存的なRNaseT1のデザイン

コイルドコイル蛋白質は、フォールドする事によりそれぞれのペプチド端点が空間的に近づくという構造的な特徴を持っている。ここではこの相互作用を利用する事により、蛋白質構造内への3本鎖コイルドコイルドメインの導入を試みた。この場合、ABCタイプのコイルドコイルを用いてA、Bタイプのコイルドコイルペプチドを元々の蛋白質構造へ導入する事により、Cタイプコイルドコイルペプチド依存的に蛋白質機能制御(アロステリックな制御)が可能となることが期待される。ここでは、天然蛋白質としてRNaseT1を用い、このサーキュラーパーミュータントにA、Bタイプのコイルドコイルペプチドを導入したIZA-cpT1-IZBを設計した。CDスペクトル、熱安定性等の評価からCタイプコイルドコイルペプチド依存的に、RNaseT1のサーキュラーパーミュータントドメインのリフォールディングが可能である事が示された。また、これに伴いRNaseT1の酵素活性の回復が見られた。

金属応答性コイルドコイル蛋白質を利用した金属イオン応答GFP変異体の構築

これまでに、疎水コアにおけるいくつかのIleをHisへ変異を施すことによって、金属イオン存在下でのみコイルドコイル構造を形成する事が可能なコイルドコイル蛋白質変異体の構築に成功している。そこで、この金属イオン応答性コイルドコイルをGFP変異体の中に導入する事により、金属イオン存在下でのみ蛍光発色可能なGFP変異体(cpGFP-HH)の作製を試みた。cpGFP-HHの遺伝子含むプラスミドDNAを導入した大腸菌株を、遷移金属イオン(Cu2+、Ni2+)存在下で発現誘導をかけた際の大腸菌細胞の蛍光発色の様子を観察した結果を示す。この結果Cu2+存在下の場合においてのみ、明確な蛍光発色が観測された。一方で、興味深い事にNi2+の場合には、ほとんど蛍光発色は観察されなかった。

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様々な刺激応答性蛋白質のデザイン