Current reserch

 合目的な蛋白質の機能デザインは、蛋白質科学の究極な目的である。しかしながらあらゆる場面で有効な方法論は、昨今コンビナトリアルな手法、あるいは分子計算的な手法の有効性が提唱、実証されている事からも分かるように、一般に困難であると認識されている。たとえば天然蛋白質に広く見られるリガンド依存的な挙動についても、デザインすることは容易ではない。

 天然の蛋白質は、シングルドメインで構成されているものだけではなく、マルチドメインからなる蛋白質も数多く存在する。一般にマルチドメインからなる蛋白質はそれぞれのドメインごとに異なる機能を持ち、これらが協同的に機能する事で複雑な蛋白質機能を担っている場合が多い。従ってこれらのドメインを個別にデザインし、その組み合わせにより、高度な機能を持つ人工蛋白質を創成することは非天然の蛋白質デザインに対するスマートな手法である。

  コイルドコイル蛋白質は、天然に広く見られる構造ドメインの一つであり(全天然蛋白質の5%程度)、一般に蛋白質間の会合において重要な役割を果たしている。2−5本のα−ヘリックス構造が束ねられた単純な構造ではあるが、その可溶性の高さ、7残基のアミノ酸の繰り返し構造からなるという配列の簡便さから、この蛋白質を新規機能を持つ蛋白質デザインのプラットフォームとして用いる事はラショナルデザインの観点から有効と思われる。我々の研究室ではこれまでに、天然のコイルドコイル蛋白質をベースに、より理想的な三本鎖コイルドコイル蛋白質のデノボデザインを行い、さらにこれをベースにして、pH,金属イオン、光などの外部刺激応答性を付加する事に成功している。また、このデザインコイルドコイルをベースにして天然の別の機能を持つドメインと組み合わせる事により、外部刺激応答性の非天然蛋白質の創成を試みている。近年生体内プローブとしての人工蛋白質デザインに注目が集まっており、また一方でこれらのアプローチは超分子化学的にも身近なものと思われる。本研究室でのこれらの研究成果に関して紹介する。

様々な刺激応答性蛋白質のデザイン

新規機能を持つ蛋白質のデザイン