2.有機ケイ素化合物の構造解析

 近年、ケイ素を中心とした有機金属化合物の研究が盛んに行われている。その一種であるシランカップリング剤は研究例が多く、広く実用化されている。シランカップリング剤は一般にRnSiX4-n(n=1-3)の構造式で表される。ここでRは疎水性の官能基であり、XはCl-、CHO-等の加水分解されやすい基である。疎水性基は樹脂との親和性を持ち、容易に加水分解される官能基部は主に素材表面の親水性基に作用する。またこの構造から、シランカップリング剤を界面活性剤の一種と考えることもできる。
 このシランカップリング剤は前に述べた性質から、無機化合物と有機化合物の仲立ちをする機能をもつ。この機能は多くの分野で取り入られている。例として、ガラス繊維処理剤、強化プラスティック処理剤、コーティング剤や接着剤等があり、対象とする素材の機械的強度、耐水性、耐熱性、耐候性、耐磨耗性、電気特性等の物性の向上が目的である。また、シリカゲル表面改質剤としても用いられ、このシリカゲルは高速クロマトグラフィーの充填剤やタイヤ用トレッドゴムの配合剤等に使用されている。
 このように有機金属化合物の一種であるシランカップリング剤のようとは多岐にわたるが、応用先を考える一方で、その機能の発現の要因を探ることも非常に興味深いものがある。
 近年コンピュータの発達と共に電子軌道を用いた分子エネルギーの非経験的計算(abinitio法)も発展し、以前用いられていたUrey-Bradley力場、原子価結合力場、中心力場、局在対象座標を用いた力場による経験的な計算に替わって、多くの分子に対して振動スペクトル解析が行われてきている。
 本研究室では、有機ケイ素化合物に対して非経験的計算を用いた構造解析を行い、基準振動計算による振動スペクトル解析を行っている。

第19回国際ラマン分光会議(8-13 August 2004,Gold Coast, Australia)の要旨


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