平成25年度 卒業研究配属学生さんへのメッセージ

121225 神取秀樹

 たまたまグーグルで「卒研配属学生 メッセージ」を入力したところ、平成16年度のものが2番目に、平成20年度のものが3番目に、平成23年度のものが5番目に、平成19年度のものが6番目に、平成17年度のものが7番目に出てました。同じようなことを他の人がやっていないのが意外でしたが、懲りずに続けることにします。

 今年は、こんな学生さんに仲間に加わってほしい、という私の希望を書いてみます。研究室選びの参考にしてください。

「生体分子の物理化学的研究に興味のあるひと」
 生命は実に不思議です。その「いのちの不思議」を、『光といのち』をキーワードとして解き明かそうとするのが我々のスタンスです。ここで『光』というのは、ロドプシンやDNA光回復酵素のように生体分子の機能を指すと同時に、いのちのはたらきを解き明かすためのツール(光で解明する=分光学)でもあります。まずは、いのちの不思議をより深く理解したい、という学生さんを歓迎します。

「生物物理化学を受講しているひと」
 『光といのち』研究の私が行う講義ですので、当然、その中で「いのちの不思議」を君たちに伝えたいと思っています。従って、私自身は現在、「生物物理化学」を受講している学生さんに配属してもらいたいと希望します。
 しかしながら実際には過去3年間、5名の配属学生に対して私の講義を受講していたのはM2が4名、M1が2名、B4が4名、ということですので、現在、受講していなくてもさほど気にする必要はないでしょう。受講していない学生さんは配属後、後悔する傾向があるようですが、いのちの不思議さへの取り組みは週に3回もある研究室セミナーで徹底的に研かれるので心配はありません。

 次は研究の話です。
 過去のメッセージでも書いているように、どうすれば研究を成功させることができるか、という問題は、研究者にとって永遠の謎です。過去の知識はある程度、必要ですが、それだけでは不十分です。
 世界中のすべての研究室主宰者(PI; Principal Investigator)が直面しているこの難題に、私がどういう方針で取り組んでいるか、求める学生さんの人物像を紹介することで示したいと思います。


「引きの強いひと」
 PIがいちばん欲しいのがこういう学生さんです。しかし、誰が研究において引きが強いのか、それは謎であり、やってみないとわかりません。麻雀や競馬が強ければ研究でも引きが強いかというと、必ずしもそうではありません。私はいろんな学生さんの研究の場面における引きの強さと引きの弱さをいつも観察しており、いつかその相関についての論文を書きたいと思っています。

「部活を頑張ったひと」
 これは重要です。私は学業成績よりもよほど重要視しています。なぜ、そうなるのか? 1つには、部活で頑張ったという達成感をもってラボに加わった学生さんは、集中力があります。ここぞというところで頑張れると同時に、困難を克服するための工夫を経験していることも重要です。また、仲間を思いやることができる学生さんも多いようです。体育会系でも、そうでなくてもいいですが、部活やサークルに熱中した、という学生さんは歓迎です。

「熱中できるひと、粘り強いひと」
 研究は面白いけど、たいがいうまくいかないものであるがゆえに、熱中できる粘り強い学生さんは有望です。いけるかも。

「GPA、偏差値を気にしないひと」
 教員としてこういうことを書くべきでないのかもしれませんが、私はDプログラムで最もGPAを気にしない教員でしょう。GPAは高くても低くてもいいけど、それに振り回されている学生さんはうちの研究室には不要です。

「タフなひと」
 神取研はキツイから自分にはどうかな、と思いながら私の文章を読んでいる学生さんもいるかもしれません。半分は当たっていますが、半分は間違っています。
 私はKK君のようなタフな学生さんは徹底的に鍛え上げますが、弱い学生さんには全くキツくありません。極端な話、何もしなくても「装置が壊れなくてよかった」と思うようにしますので、意に反してうちの研究室に配属することになったとしてもご安心を。
 もちろん、私がどちらの学生さんを希望しているかはおわかりでしょう。
 毎年、神取先生に鍛えてもらおうと思って来ました、という学生さんがいることは、頼もしく思っています。

「楽観的なひと」
 ほんとうに面白い研究、価値のある研究は決して成功しませんので、楽観的な性格は研究を成功させるための秘訣かもしれません。

「遠くをながめているひと」
 一生懸命に実験をしていると、近いところばかりに目が行くのですが、ぼーっと遠くをながめるのは大切です。

「皆が右を見ているときに、左を見ているひと」
 研究を成功させる秘訣は、他の人がやっていないことをやることです。しかしどうしたらそれができるのか。これがなかなか難しい。他の人と同じことをするのは楽ですが、違うことをするのはそれほど簡単ではありません。
 私が「変な学生さん」をわりと好きなのも、そこに理由があります。

「ソフトボールのうまいひと」
 負けず嫌いの私が毎年、ソフトボール大会のある秋に口走るのが「化工なんかに負けるんじゃないぞ」という科白です。配属に際して口外したことはありませんが、ソフトボール大会で貢献できる学生さんに来てほしいとずっと思っていました。
 ただし、今年、化工を破って優勝してしまったので、ソフトボールに関してはもう完全に満足しました。1回優勝すれば十分です。この希望はなくなりました。


 私は自分が大学院の学生だったとき、分野で世界トップの研究室にいましたが、国際会議で質問をすることはできませんでした。助手になったとき、なんとか国際会議で質問ができるようになりましたが、その際にはキーワードをノートに書いて文章を組み立て、頭の中で質問を何回も繰り返した上で手を挙げていました。
 現在、私の研究室の学生さんは外国人の講演に対してごくふつうに手を挙げ、ごく自然に質問をします。国際性は神取研究室の特徴ですが、週3回もあるセミナーにおいていちばん最後に英語の質問を経験していることからすると、当たり前のことなのかもしれません。20年前とは大きな違いですね。

 君たちが配属する平成25年度は、博士後期課程の学生が毎学年そろう初めての年となります。それも2名の日本人学生がドクターコースへ進学して。スタッフ、博士前期課程の学生も含め、実に充実した体制で研究に打ち込めます。
 そして研究テーマも面白いものが君たちを待っています。
 どんな学生さんが私たちの仲間に加わってくれるか、楽しみにしています。