平成20年度 卒研配属学生さんへのメッセージ 

071210  
神取 秀樹

 今年のメッセージは、Q&Aの形で示したいと思います。

★ まずは研究に関することから。 
《Q》 神取研ではどんな研究をしている?
《A》 光をエネルギーや情報へと変換する蛋白質に関する基礎研究や応用研究をしています。レチナール分子をもったロドプシンを例にとると、基礎研究では「ロドプシンを究める」、応用研究では「○○でロドプシンをつくる」「ロドプシンで△△をつくる」といったキャッチフレーズになります。

《Q》 その蛋白質の特徴は?
《A》 色が付いていることです。これらの蛋白質が呈する様々な色は、一日中見ていても飽きません。例えば、全く同一のレチナール分子をロドプシンという蛋白質反応場が制御することによって、我々は様々な色を見分けることができます。
我々の研究は、このような視覚の起源に迫るものでもあります。応用研究の例としては、粘土をつかって色覚の蛋白質の性質を再現することに成功しました

《Q》 研究手法は?
《A》 一般に、研究は「つくる」と「はかる」に分けることができます。君らが配属のため訪問する研究室で先生に、『先生の研究室は、「つくる」のと「はかる」のと、どちらに強みがありますか?』と尋ねてみてはどうでしょう?
私のラボでは、蛋白質の変異体や同位体標識試料なども自由に「つくる」ことができますが、これは装置と資金のあるラボであれば、世界中どこでもできることです。一方、赤外分光を中心とした分光計測は世界をリードしており、「はかる」ことにかけてはどこにも負けないという自負があります。君らがやりがいを実感できる研究テーマを与えられると思っています。



★ 次は日常の生活について。
《Q》 コアタイムは?
《A》 この質問をすると私の機嫌が悪くなることがだいぶ知れ渡って、誰からも聞かれなくなりました。詳しくは、私のプロフィールと過去のメッセージを参照のこと。

《Q》 本当に厳しいの?
《A》 神取研は厳しいという評判ですが、考えや時間を縛られるのを最も嫌う私の研究室ですから、自由度はきわめて大きいと思います。院生の就職活動も自由ですし、どんな時間の使い方をしてもらってもかまいません。そういう意味では、学科でいちばん「緩い」「楽な」ラボだと思っています。
ただ一方で、私の研究に対する厳しさは定評あるところです。それがなければ世界と戦えるはずがないので、当たり前のことです。神取研が誇る実験データを出しているのが大学院生ですので、研究上の妥協は全くしません。そういう意味では、学科でいちばん「厳しい」「キツい」ラボであろうと思っています。
「緩い」のか、「厳しい」のか、本当のところが知りたければ、ラボに来て院生に聞いたらいいでしょう。


《Q》 プレゼンがうまくなる?
《A》 プレ卒研でも強調しましたが、「プレゼンの鬼」である私のラボでは、自分の仕事や考えをひとに伝えるためのプレゼンテーションを最重要視しています。真剣勝負のラボセミナーなど、プレゼンを磨く機会が多く、そういうことになるのだと思います。


その他のことについて。
《Q》 世の中の役に立つ?
《A》 これも苦手な質問ですが、最近、うちのラボで最も世の中の役に立っているのは人材育成だと思っています。学生にマニアックな実験研究をさせて、はたして社会にどれほど貢献できているのか疑問でしたが、就職担当を経験してみて、私が日常的に言っていること、考えながら仕事すること、時間を上手に使うこと、人間関係を大切にすること、プレゼンの重要性などは、企業に就職する学生にまさに求められていることを知りました。博士の学位をとって日本の学術をリードすることを目指す学生さんだけでなく、修士課程を修了して社会に出る人材の育成と輩出においても、胸を張れるものがあります。

《Q》 教授が学科長をしている?
《A》 何の因果か今年はその通り。研究しか能のない私が学科長をするとは、鶏刀で牛を料理するようなものであり、本学にとっても無益なことだと思っていますが、順番だから仕方ありません。限られた数の学生に細やかな研究指導をする方針の私にとって、就職担当をしていた昨年と今年はそれができず神取研の院生に迷惑をかけました。しかしこれもあと3ヶ月余の辛抱、君らが卒研配属をする4月からは研究の現場に戻って、しっかりとした指導ができると思っています。お楽しみに

《Q》 どんな学生の配属を希望?
《A》 毎年、意識の高いよい学生(単に成績ではなく)が配属しており、「厳しい」という噂も含めて、例年通りの学生が配属してくれればよいと思います。研究室の基礎固めができて発展期に入った今、私が1つ望むとすれば、もう少し「変な」学生さんに仲間に加わってもらいたいと思っています。

《Q》 神取研は人気研究室?
《A》 私はずっとそう思っていました。しかし、昨年の配属でそうでないことが判明しました。

《Q》 他大学からの受験は?
《A》 私の研究指導は、最低3年を考えており、他大学から大学院に入って修士課程で就職すると、2年しかありません。名古屋に引っ越して順応することを考えると、十分とは思えませんが、我々の仲間に加わりたい他大学の学生さんは、連絡をいただければと思います。博士後期課程まで視野に入っていれば、5年ありますので、よりよいかと思います。


 以上、平成20年度に配属する学生さんへのメッセージを書いてみました。どんな学生さんが我々の研究グループの仲間に加わってくれるか、楽しみにしています。