博士後期課程(博士課程)とは・・・

研究室配属前の3年生は、博士前期課程(修士課程)に関してはある程度予想できても、博士後期課程とはどんな課程か予想ができないと思います。
博士後期課程とは、博士号を取るために、博士前期課程(2年)の後に、3年間の研究・研鑽をする課程で一人前の研究者になる登竜門です。
中村研では、この博士後期課程への進学を強く後押ししています。

まず、博士号の意味合いをしっかりと理解することが必要ですが、今後、日本は少子高齢化社会を迎え、生産者人口が減少します。
その中で、日本が現在の経済規模を維持していこうとすると、一人あたりの生産性を高め、個々の能力を高める必要があります。
そのために、研究を通して深く物事を考え、困難を克服し、これまで理解されていなかった事象を説明できる”博士”の重要性が増しています。
また、国内マーケットが縮小する以上、日本企業は国際化が求められています。
既に、海外では、博士号を持っていない研究者は研究者として認められず、リサーチ・アシスタントとしてしか見られません。
このような風潮ですので、海外企業との交渉は博士号を所有している人しかできないという企業も多々あります。
今後は、これまで以上に博士号取得者の必要性、需要が上がってくるはずです。
実際、2015年4月に当時の安倍内閣(教育再生実行本部)は、「今後、5年間で博士号取得者を倍増させる」と言っています(参考資料:リンク)。
これは社会の要請に基づいて、これからの時代が少しずつ変わっていくことを暗示しています。


博士後期課程に進むことをおすすめする人は、下記の条件を満たす人です。
1.自分の能力を伸ばしたい人
2.研究が好きな人、研究職(大学教員を含む)で将来、働いていきたい人
3.経済的に進学可能な人
そして、 
4.博士号を標準修業年限(3年)内に取る力がある人 です
上記をある程度満たしている人は、博士後期課程への進学を真剣に考えるべきと思います。

中村研では、これまでに卒業した6名の博士後期課程学生は、すべて3年で博士の学位をとっています。
これは、博士の標準修業年限(3年)での一般的取得率が42.1%(平成25年度大学院活動状況調査:リンク)であることを考慮すると、高い取得率と言えます。
博士の学位は自分の力で勝ち取るものですが、中村研では修業年限で取得できるように、全力で支援します。

また、博士号取得後の進路も非常に重要です。
中村研のこれまでの6名の博士号取得者の就職に関しては、
・大手総合化学会社(研究職)
・マックスプランク研究所(海外留学:ポスドク1年)→国内大学助教
・大手製薬会社(研究職)
・大手製薬会社(研究職)
・大手総合化学会社(研究職)
・プリンストン大学(海外留学:ポスドク5か月)→国内大学助教
となっています。博士号取得者は幸せになるべきと考えていますので、就職に関しても、全力で支援します。


また、博士後期課程在学中は、経済的な面も悩みの種です。
博士後期課程学生は、学術振興会(JSPS)の特別研究員に申請し、採択されると毎月20万円の収入が保証されます。
全国での特別研究員採択率は、約20−25%ほどですが、中村研に在籍した博士後期課程学生6名の内、5名(83%)が特別研究員に採択されています。
特別研究員の申請書の書き方もしっかり指導してできるだけ採択されるようにしています。
また、申請時には、採択されるために予め準備しておいたほうが良いことも多数あるので、そのためのアドバイスもしています。
さらに、特別研究員に採択されなかった場合でも、名工大フロンティア研究院による支援制度や学年ごとに申請できる助成金をまとめた書類(中村自作)もあります。

博士の学位は、自分の力で勝ち取り、その自信と誇りを胸に、将来研究者として活動していくために重要です。
有機化学を修めて、博士号を取得したいという向上心あふれる方は、お気軽に中村までご相談ください。
博士後期課程卒業者のコメント


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以下のQ&Aもご覧ください。
Q1. 博士号取得者は就職が厳しい?
A1. 一番よく聞かれる質問です。少なくとも、工学部:有機合成関連で博士を取った場合は、就職が大変という実感はありません。
ただし、全分野(保健、人文、社会分野等を含む)で博士号取得者をまとめると、人文、社会分野のように就職が非常に厳しい博士号取得者も含むため、
統計上、”博士は就職が厳しい” というマスコミ報道が広がっています。
さらに、工学博士の中でも、有機合成関連の博士号取得者は、製薬、農薬、総合化学会社における産業的ニーズが大きいため、
就職にはあまり困りません。

Q2.博士卒は、修士卒より給料:生涯年収が低い?
A2.文科省の調査をまとめた記事を見てください(こちら)。
文章を転記しますと
「文部科学省の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が博士課程の修了者を対象に実施した大規模調査で、工学系人材の卒業直後の総収入は人文・社会系の2倍程度に達することが分かった。人文・社会系の人材で最も多かったのは年200万円前後だったのに対し、工学系の人材は同400万―500万円。理系ではいわゆる「高学歴ワーキングプア」が当てはまらないことが分かった。
となっています。Q1と同じ答えになりますが、全分野(人文、社会を含む)を総合して統計を取ると、給料が低い という結果が出ます(就職が困難な分野の博士号取得者も含むため)。
繰り返しになりますが、工学分野ではそのようなことはない と感じますし、上記の統計を基に、巷で囁かれている”博士卒は、修士卒よりも生涯年収が少ない”ということも無いと思います。

Q3.学位が取得できるか不安です。
A3.安心してください、そんな自信が最初からある人はだれも居ません。
皆不安と闘いながら、博士号を自分の力で勝ち取り、その自信を基にして世界で活躍する研究者となります
博士号は、研究者の運転免許証のようなものです。
ですから、将来、研究者として生きていきたいのであれば、是非、前向きにチャレンジしてほしいと願います。
中村研では、博士号取得を強くサポートします。

Q4. 早く社会に出て役に立つ貢献したいですが、博士後期課程に進学して、社会に出遅れるのが不安です。
A4. これもよく聞かれる不安です。
まず、社会貢献とは何かを考える必要があるのですが、”能力のある人が手早く社会に出る”ことが本当の社会に対する貢献なのか?と疑問に思います。 
「誰にでもできる貢献」ではなく、「高度な知識を蓄え、その人にしかできない社会貢献」をする方が価値の高いことだと思いませんか?
今後、雇用形態は、メンバーシップ型から徐々にジョブ型の雇用形態に代わっていきます。つまり各分野のプロフェッショナルな人材が求められます。
そういった高度プロフェッショナル人材になりたいなら、博士後期課程に進学し、自らに希少性をもたらすべきだと思います。

Q5.就職が学生売り手市場の今に就職活動をした方が良くないですか?
A5.最近の就職状況の好転は、これまでの好景気、不景気に左右された就職状況と一線を画していることを理解する必要があります。
今の就職売り手市場の主要因は、団塊の世代の退職に伴う働き手の減少によるもので、今後、日本人労働者は減少の一途をたどります。
この傾向をそれぞれの企業が人員増で補おうとしているのが、現在の就職状況です。
しかし、いずれ労働力の質的な向上が求められるようになります。
労働者には、頭脳労働(研究、企画、開発など)が要求され、それができる人たちが選別され、待遇の差として現れる社会になっていくものと思います。そのために、今するべきこと、できることを、しっかりと考えてみてください。

Q6.博士課程の指導教員を選ぶポイントは何ですか?
A6.まず、質の高い研究をしていることが重要です
(少し前までは、論文数が重要でしたが、留学、就職、アカデミックポスト獲得において、研究の質の高さが一番重要な評価点となります。)。
また、研究内容や研究分野の将来性、産業とのつながりなど、多数のファクターもありますが、見落としがちな重要な点を一つだけ挙げるとすると、指導教員との相性は最重要です。
これは、指導教員が、その育成する博士の将来(卒業後も)を全面的に支援する熱意があるかにも依存します。
博士号は本人が努力して取得し、その自信を胸に社会で活躍する のですが、指導学生のために常に支援する努力を示す指導教員を選択することをお勧めします。

Q7.多くの人と異なる経歴になることが怖いです。皆と同じく修士号取得で十分ではないでしょうか?
A7.修士号取得者は、研究の基礎的考え方を学んだ者として就職採用されます。このため、総合職として会社に必要な戦力とされる反面、数多くいる人員の一人です。
なぜなら、多くの人と似た経歴だからです。
博士号取得は、自らに希少性を付与することと考えてください
自分が特別な人材・人財として、今後の人生を立ち回りたいと考えるのであれば、博士号取得は非常に大きな武器になります。

Q8.他にも不安がたくさんあります
A8.遠慮なく、研究室に来て質問してください。
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最後に・・・・
博士後期課程の相談・悩みを聞くと、損得の話が良く出ます。
これは、人生の大きな決断という意味で仕方がないことで、そして、それらも踏まえて博士後期課程の進学を考えるべきです。
しかし、一方で、博士後期課程での研究は、人類のサイエンスに多少なりとも影響を与える、ブレイクスルーを与える と思います。
これは、自分自身が人類として生まれ、後世の人類の発展に寄与する点で、自己研鑽としてだけでなく、
人として生まれたことの価値の発見につながるのではないかと感じます。
まだ若い皆さんには、小さくまとまってほしくないと願います。

参考HP:
某博士課程のblog2
博士課程の夢-Chem Stationより
有機合成化学の就職先 理系トーク 理系による理系のための化学メディア より」
博士課程の誤解と真実 ー進学に向けて、両親を説得した資料をもとにー
未来を牽引する大学院教育改革 〜社会と協働した「知のプロフェッショナル」の育成〜 (2015中教審)
民間企業における博士の採用と活用 −製造業の研究開発部門を中心とするインタビューからの示唆−(NISTEP)」
博士のススメ ・・・・(-_-;)オススメ?
博士課程に進学したあなたへ-Chem Station
博士課程学生の奨学金情報-Chem Station」
博士号の取得:博士課程の在籍中に気をつけたいこと〜Got it! Lab.」
博士で製薬企業研究職を目指すメリット
博士しか相手にされない欧米、博士を必要としていない日本
博士課程を経験して感じたメリット・デメリット(修士との比較)


博士後期課程人材に関する新聞記事等

博士課程学生に生活費240万円 政府支援」2021.1.25
ノーベル賞 大隅さん“博士課程に進む人 多くなることが大切” 」2020.1.30
博士を目指す皆さんへ〜文部科学大臣メッセージ」2020.12.15
産学で開発人材育成を 工学系大、博士課程離れ対策 2018.11.26」
博士 日本だけ減少…研究力衰退あらわ 7カ国調査 2018.8.22」
急務は博士人材育成、文部科学省イノベーション会議が提言 2017.7.19」
博士人材の活躍推進、産学官円卓会議が行動計画」2016.7.19
工学博士の新卒年収が明らかに!人文・社会系の倍だったとは・・2015.7.9」

博士関係データベース
文部科学省、科学技術・学術政策研究所ライブラリー

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