化学修飾シクロデキストリン

はじめに

シクロデキストリン(CD)は、ある種の酵素がデンプンからつくり出す環状オリゴ糖である。下図に示すように、D-グルコースがα-1,4結合した環構造に由来する疎水性空洞を有する。この空洞にイオンや分子を取り込む(包接する)ことができることから、CDはホスト化合物として注目されている。例えば、香料を包接させると、平衡に基づいて香料が少しずつ揮発するようになるために香りを長く続かせることができる。また、難水溶性薬品を包接することで水に溶ける剤形にし、胃酸による薬品の分解を防ぎ、腸からの吸収を可能にするとともに、副作用となる胃壁への刺激を抑えることもできる。

しかし、天然のCDの能力には限界がある。そこで、CDの弱点を改良し、さらには、より合目的的な性質を付与するための化学修飾(置換基の導入)が必要となる。

以下に本研究室で行われた研究をいくつか紹介する。


最近の主な研究

    1.陽イオン結合能力を目指したCD空洞の改造





    2.より強力な包接能力を目指したCDダイマーの研究

    3.位置特異的な置換基導入のためのポリスルホニル化シクロデキスロトリンとその位置異性体の研究


    ペンタキス(6-O-メシチレンスルホニル)-β-CDの3種の位置異性体

今後の研究

これまでの化学修飾研究の結果、多くの重要な手法が確立されてきた。今後は、それらを活かして、さまざまな機能を持つ誘導体を研究する。

 例えば、CD上にゲストとの新たな相互作用を可能にする官能基を導入して、多点相互作用によりゲストを精密に認識する誘導体の研究を行う。そして、これらを、光学異性体を含む異性体の識別、その分離同定、あるいは精製のための材料として応用する。