メソイオン化合物

メソイオン化合物は「単一の共有結合構造やイオン構造では十分に表現することができない複素五 (六) 員環化合物で,環内に6π電子を有するものである」(1955年,Ollis)。例えば,次のような化合物が合成されている。

デヒドロジチゾン

シドノン

ミュンヘノン

Fischer & Besthorn (1882)

Earl & Mackney (1935)

Huisgen (1963)

当研究室で行われた最近の研究結果を紹介する。

(1) 1,3-ジフェニル-5-アジドテトラゾリウム塩の合成と性質に関する研究
1,3-ジフェニル-5-クロロテトラゾリウム塩とアジ化ナトリウムより1,3-ジフェニル-5-アジドテトラゾリウム塩を合成し,その性質を調べた。
 

(2)メソイオン型アジノビス (1,3-ジフェニルテトラゾリレン) と関連メソイオン化合物,及び1,3-ジフェニルテトラゾリウム-5-アミド類の合成と電気化学的性質に関する研究

種々のジフェニルテトラゾリウムメソイオンを合成し,その電気化学的性質を調べた。

1,3-ジフェニルテトラゾリウムメソイオンは分子中に多数の窒素原子を含むにもかかわらず安定な化合物であり,その中には電気化学的に興味深い性質を示すものもある。例えば,アジノビス (1,3-ジフェニルテトラゾリレン) は,メソイオン構造を維持したまま段階的に一電子ずつ酸化され,還元で元に戻る可逆的なレドックス系を構成する。また,各段階において生成物は著しい色の変化を示し,各々が安定な結晶として単離できる。

以上の研究から多窒素メソイオン化合物は,液晶有機磁性体などの高機能性有機材料への応用が期待できる。また,多窒素メソイオンを新しい窒素クラスターとしてとらえることもできる。フラーレンは炭素クラスターとしてよく知られているが,窒素クラスターの合成例は殆ど例がない。