学歴
1988年　東京理科大学理工学部応用生物科学科卒業
1991年　東京工業大学大学院総合理工学研究科生命化学専攻修了
1995年　東京工業大学大学院総合理工学研究科化学環境工学専攻
　　　　　学位取得修了

学位
1995年　博士（工学）「脂肪酸資化菌によるポリエステルの合成」

職歴
1994年4月　住友化学工業（株）
1999年5月　グリーンブルー（株）
1998年4月　東京工業大学生命理工学部助手
2004年4月　名古屋工業大学助教授

所属学会
化学工学会、生物工学会、環境バイオテクノロジー学会
農芸化学会、水環境学会
American Society for Microbiology（米国微生物学会）

僕たちこそ堀研の主役(ある意味教員)だよ。僕たちは様々な種類の酵素、つまり触媒を体の中に詰め込んでるんだ。だからいろんな物質変換反応に与れるのさ。ダイオキシンやPCB、環境ホルモンに残留農薬まで、いろんな環境汚染物質を分解できるんだよ。最近では、分解だけでなく有用な化学物質の生産の手助けまでする奴もいるんだ。もっとも昔から、味噌や醤油、チーズなどの発酵食品や、ビールや日本酒などのお酒の生産を手掛けてきたのは僕たちだから、働く場所が広がったと言うべきかな。でも中には病気の原因となったり、産業設備にダメージを与えたりと、人間にとっては悪者もいるけどね。そー、良い奴から悪い奴までいろんな奴らがいるのは、人間社会と同じさ。何せ、１グラムの土や１ミリリットルの湖水には、場合によっては日本の人口に匹敵する数が棲んでいるんだぜ。

でも、僕らは生態系の中では“分解者”という重要な働きを担っているんだ。僕らがいなかったら、地球上は生物の排泄物や遺骸で一杯さ。それに、あまり知られていないかもしれないけど、植物同様、“生産者”の役割だって果たしてるんだぞ。光合成をする奴らも大勢いるし、中には太陽エネルギーではなく地球のエネルギーを利用して生きている奴らまでいるのには、驚きだろ！？太陽光の届かない海底の熱水噴出孔の周りには、彼らを出発点とする独自の生態系が形成されているんだって。とにかく、地球上の物質循環を支えているのは僕らさ。

研究室では、僕らのこういった機能や役割を解明したり、物質変換能力を利用して新しい環境技術を産み出したりするために、先生や学生さんたちが日夜、働いているわけよ。ご苦労なこった。中には、遺伝子をいじられて、新しい物質を分解したり生産したりする能力を身につけた“スーパーバグ”に変身しちゃった奴だっているよ。まあ、こき使われるのがオチだけど。もともと僕らの中には、20分で新しい世代に交代する気の早い仲間もいるし、お互い遺伝子だって交換しちゃうんだ。抗生物質で殺されそうになったら、対抗する遺伝子を取り込んで生き延びるのさ。だから、同じ時間生きていても、人間たちより進化のスピードはずっと早いんだよ。適応力が高いというか。こういうのを馴養と言うんだけど、研究室でも利用されているよ。例えば、毒性の高い物質中でも生きることができて、分解や有用物質の変換までできるような優等生を育てるためにね。

どう？僕らの凄い力がわかったって！？こんなに凄い僕たちの姿を見てみたいだろう。でも僕らは人間の目では見えないぐらい小さいよ。代表的なバクテリア君でも１ミクロンメートルだからね、顕微鏡を使わないとね。だけど、せっかくここまで読んでくれたんだから、今日は特別に僕らの仲間の写真を見せてあげる。本当は恥ずかしがり屋なんだから、これ特別だよ。ここまでの姿を見せるのは、世界で始めてなんだから。堀先生はね、これを見てから、僕たちのこと、微生物ではなく美生物って呼ぶようになったんだよ。グロテスクという説もあるけれど。

(代筆　堀克敏)