化工研の歴史2(平成以降)

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 元号が令和になり、令和2年3月末に森秀樹教授が定年退職するにあたり、 化学工学分野も山田幾穂先生がまとめられた歴史に名を連ねた先生方から教員が総入れ替えとなる。 ここでその後の平成の化工研担当者の歴史をひとまずまとめておきたい。
 昭和60年に工業化学科と合成化学科を統合し応用化学科(D)となったが、 平成16年に国立大学法人になるとともに材料工学科の旧高分子工学科(W)と合体し、 生命・物質工学科となった。さらに平成28年に環境材料工学科の旧無機材料工学科(Y)と 合体し、生命・応用化学科となった。現在、D:W:Yの学生比率は2:1:1で教育に当たっている。
 この間、Dでは、応用化学科時代は分析化学、物理化学、化学工学、無機化学、有機化学、高分子化学 の6分野で運営を続けていたが、法人化に伴い、旧教養が解体され、生化学分野が加わり、 7分野として安定した運営が続けられている。
 また、法人化に伴い、教官→教員と変化し、役職の呼び名も助教授→准教授、助手→助教と変化した。

 平成以降の化学工学担当の教員を任用順に示しておく。
 加藤禎人教授(D61),小田昭昌助手(H5),岩田修一准教授(H1),長津雄一郎助教,堀克敏准教授,南雲亮准教授,古川陽輝助教(H23)。


 加藤禎人は東レ株式会社から平成3年に着任した。 学生時代は山田幾穂に師事していたが、着任後は平岡節郎に師事し、新しく撹拌研究に携わった。 平成4年に平岡節郎が化学工学会ミキシング技術特別研究会の会長になったため、2年間事務局を担当した。 その後、平成8年に九州大学で学位を取得し、大同工業大学(現大同大学)の松浦章裕教授の依頼により 情報技術に関する非常勤講師を17年にわたって担当することになる。 その後、平成13年にドイツRWTHアーヘン大学(旧アーヘン工科大学)に1年間長期出張した。 平岡節郎退官後、撹拌研究を引き継ぎ、平岡節郎と亀井登((株)ダイセル)がまとめた撹拌所要動力相関式の 応用範囲を拡張し、亀井・平岡の式は確固たる相関式として知られるようになった。 平成18年から化学工学会粒子・流体プロセス部会ミキシング技術分科会の副会長兼事務局を4年間務め、 平成26,27年に同分科会の会長を務めた。 その後、大阪大学を定年退職した井上義朗教授が創出したカオス理論に基づく流脈の混合理論を引き継ぎ、 各種大型翼の性能を明らかにして、オリジナルのホームベース翼を生み出した。 その間、平成15,16年に化学工学会東海支部会計幹事、平成21,22年に庶務幹事などを歴任し、 平成27,28年に副支部長を務めた。 また、平成15年から12年間、同学会産学官連携センターグローバルテクノロジー委員会の 事務局を務め、平成27年から副委員長を務めている。 特筆すべきは平成26年から何故か愛知大学野球連盟の理事を務めることになり、 硬式野球部の運営にかかわることになった。何分野球の本質を知らない素人のため、 まずは荒れ放題だった千種グランドの野球場の再生に取り掛かり、 人力にて野球場らしい外観を取り戻すことに成功した。

 小田昭昌は平成6年に修士課程修了後、すぐに化学工学担当の助教となった。 森秀樹に師事しており、非常に力強い右腕として力を発揮していたが、平成7年に 日本リファイン(株)へ転籍した。現在は同社の取締役になっている。


 岩田修一は,平成8年に三井東圧化学(株)(現 三井化学(株))から着任した。 彼の容貌とは裏腹に,“名は体を表す”そのもので研究面では厳しく, 学生時代に師事していた新垣勉の粘弾性流体の流動解析の研究を発展させ、 平成15年に京都大学で低メモリー分割型有限要素法による粘弾性流動解析に関する研究で学位を取得し、 平成16年にドイツRWTHアーヘン大学(旧アーヘン工科大学)のIKV(プラスチックプロセッシング研究所)に1年間長期出張した。 その間、得意のコンピューターに関する知識を存分に活用し、ソフト面だけでなく、 ハード面においても研究室内のネットワーク構築に尽力した。 今では彼なくしてはコンピューターをネット接続できないほどになっている。 その後、圧力振動を用いた高粘性流体中からの気泡の分離(脱泡技術)に取り組み、 大きな成果を上げ、粘弾性流体が関与するレオロジーや界面が関与する問題に関して多数の企業から共同研究を依頼されるようになった。 その間、平成21年から大同大学の非常勤講師を務め、平成26年には化学工学会粒子・流体プロセス部会熱物質流体工学分科会の副代表、 平成28年には同部会気泡・液滴・微粒子分散工学分科会の代表、 平成30年には同部会熱物質流体工学分科会の代表を歴任している。 また、平成27年からは同学会東海支部常任幹事、平成29年からは日本機械学会複雑流体研究会幹事、 平成31年からは化学工学会論文誌編集委員会エディター、令和元年からは日本レオロジー学会代表委員なども務めている。

 長津雄一郎は,平成15年に慶応大学博士課程を修了し着任した。 非常にユニークな粘性指状体の研究に従事し、その可視化画像は非常に興味深いものであった。 大きな成果が期待されていたが、平成23年東京農工大学へ准教授として転出した。

 堀克敏は平成16年に東京工業大学から着任した。 バイオテクノロジーの担い手として期待されていたが、名古屋大学へ転出した。


 南雲亮は、平成24年に東北大学から助教として着任した。 分離プロセスの効率化に寄与する新素材の分子設計を目的として、 計算化学的手法を用いた浄水膜の耐ファウリング性能予測や、 二酸化炭素の高効率回収を実現するガス吸収剤の物性推算に取り組んでいる。 平成24年から分離技術会東海地区幹事、平成27年から化学工学会産学官連携センター グローバルテクノロジー委員会の庶務幹事、平成29年から同学会東海支部幹事、 平成30年から同学会分離プロセス部会膜工学分科会の「膜工学ニュース」編集長を務めている。


 古川陽輝は平成26年に、本学大学院博士課程在学中であった (化工研始まって以来の企業のドクターではなく生え抜きのドクターとして) にもかかわらず、やむを得ない事情で中退し助教として着任した。 在学中から従事していた撹拌槽に関する研究を継続し、平成28年に横浜国立大学で学位を取得した。 成果である邪魔板を含めた種々の槽形状に対応可能な撹拌所要動力の相関式は いろいろな企業で使用されるに至っている。 平成29年から化学工学会学会産学官連携センターグローバルテクノロジー委員会の会計を務めている。

●平成に本学で化学工学会行事を開催した年度を以下に示す。
・1991年 第24回秋季大会
・1999年 第64年会
・2011年 第43回秋季大会(1900名を超える参加者を集め、650万円の収益を上げた。)

●平成に本研究室教員が化学工学会東海支部進歩講習会を主催し、出版した書籍を以下に示す。
・平成2年 撹拌・混合(槙書店)
・平成12年 ミキシング技術(槙書店)
・平成15年 蒸留工学−基礎と応用−(槙書店)
・平成20年 ミキシング技術の基礎と応用(三恵社)(140名を超える参加者を集め、230万円の収益を上げた。)
・平成22年 拡散分離工学の基礎と応用(三恵社)
・平成23年 装置内の移動現象の解析と可視化(三恵社)
・平成28年 気泡・分散系現象の基礎と応用(三恵社)

●平成8年以降の博士課程学位取得者を以下に示す。
・平成8年 撹拌槽の所要動力特性に関する実験的研究 亀井登
・平成11年 EGSTAR撹拌翼の撹拌特性に関する実験的研究 大石勉
・平成13年 非線形理論に基づく撹拌槽内の長周期ゆらぎ現象の研究 松田充夫
・平成16年 バグフィルターの圧力損失特性の解析と最適設計に関する研究 池野榮宣
・平成22年 超音波を用いた難分解物質に対する反応装置の開発 周勁松

●平成8年以降の本研究室関係者の学位(論文博士)取得者を以下に示す。
・平成8年 垂直平板上の気液2相流中の移動現象に関する研究 松浦章裕
・平成8年 揺動撹拌に関する実験的研究 加藤禎人
・平成12年 振動撹拌技術の工業化に関する研究 大政龍晋
・平成15年 低メモリー分割型有限要素法による粘弾性流動解析に関する研究 岩田修一
・平成28年 回転式撹拌翼の撹拌所要動力に関する研究 古川陽輝

●DG杯
 平成元年〜平成30年度に開催された30回のうち、化工研は15回の優勝を成し遂げた。
【DG杯の歴史】

*この文章は令和元年8月23日に作成した。8月26日加筆。8月28日加筆。