生体はエナンチオマー間で大きな活性の相違を示す例があります。
この時生理活性の強い方のエナンチオマーをユートマー(eutomer)、弱い方をディストマー(distomer)といいます(1984,
Ariens)。その例を幾つか挙げます。
アドレナリン(adrenalin)
副腎皮質ホルモンで交感神経興奮作用を示すが(S)-体の法が(R)-体よりも15倍ほど活性が高い。
マスカリン
マスカリンは(+)-体のみが副交感神経を刺激作用を持っている。
リモネン
(R)-リモネンはオレンジの風味成分であり、(S)-リモネンはレモンの風味成分である。
カルボン
(R)-カルボンはスペアミントの風味成分であり、(S)-カルボンはキャラウェイの風味成分である。
また、米国食品医薬品局(FDA)は、1992年に薬物に対するガイドライン(Chem. & Eng. News, June 15, 1992, p 5)を示している。そのなかでは、両光学異性体の薬物動態が異なる場合、ここの異性体に対して追跡を行うことが明文化された。